4月14日 昼下がりとカネコアヤノ
今日はやらなければならないことが二つある。食材等の買い出しと就活の面接で大阪に行かなければならないのでその分のバス代の支払いだ。
就職活動しているとオンライン面接の企業がほとんどであった。オンラインならと軽い気持ちで出した大阪の企業は対面での面接を要求した。
他のしっかりとエントリーシートを書いて提出した企業は全部落ちた。
多分大阪の企業も落ちるのだから、落ちる企業になぜバス代2400円を払わなければならないのだと不満に思いながらも、面接をすっぽかす度胸がない僕はバス代を払うことにした。
朝、Spotifyを開くとカネコアヤノが新しいアルバムを出していた。
カネコアヤノはとても昼に合う。昼の散歩にめちゃくちゃ合う。
僕の中で散歩のテーマソングといえば、ジブリ「となりのトトロ」でおなじみのさんぽではなく、カネコアヤノだ。
コンビニにバスの代金を支払いに行く必要があったので、カネコアヤノのアルバムを聴きながら歩いていくことにした。
暖かい今の時間にやっぱりカネコアヤノはよく合った。
バスの代金は2400円、持ち金は4000円から1600円に減った。
帰りにそのままスーパーマーケットに行こうとした。
しかし、今日使える10%オフクーポンを家に忘れてきたことに気づいた。家からスーパーまでは往復10分程度。10分程度の往復で10%安くなるのならば、僕はいったん家に帰ることにする。僕の何も意味をなさないような運動には後で安くなった分が対価として払われるからだ。
家に帰って、クーポンを取ってトイレに行った後にもう一度家を出た。
帰ってきたときよりもなんだか涼しかった。温度はほとんど変わっていないのに涼しく感じるのはなぜかわからない。
せっかく家に帰ってまでクーポンを取ってきたのだから、それに見合った分の対価をもらえるよう買い物をしようと思った。3000円を超える買い物をすると、300円安くなり僕が歩いて家に帰った分に、300円の価値があったことになる。しかしたった10分の運動で300円の対価があるのだろうかと考えてみる。よく考えたら持ち金が1600円なので3000円を超える買い物はできないと思い、少し恥ずかしくなった。
夜のご飯となくなりそうなバターを買った。少しでも対価の金額を上げるために、きのこの山とコーヒーと粉チーズも買った。
レジでクーポンを見せて、いくらになるのか見ていると、粉チーズが398円と予想以上に高かった。あんな粉末状のものが僕が10分歩いたことよりも価値があることが許せなかった。会計は最終的に1400円くらいだった。
家に帰る途中、汚い用水路で亀が優雅に泳いでいた。僕が見ているのに気付いたのかさっと潜って隠れた。僕だったら、あんなに汚い用水路を優雅に泳ぐことはできないと思った。亀は僕より強い。
よく動物を守ろうという人がいるけれど、それは傲慢な考えだと思う。
その発言の裏には動物は人間より弱い存在であるという考えが潜んでいるからだ。
僕は汚い川では泳げないが動物たちは余裕で泳ぐ。
僕は生肉を食べるとおなかを壊してしまうが、動物たちは食べても平気だ。
長く潜水することも僕はできないが、海の動物はみんな長く潜っていられる。
動物たちはみんな僕より強い。
そう思いながら、豚バラ肉しゃぶしゃぶ用を買っていたことに気づいて、豚よりはちょっと僕が強いと思った。でも1対1のタイマンになったときに豚に勝てるか不安なのでやっぱり豚は僕より強い。
もし世界から美味しい食べ物やきれいな場所がなくなってしまったら、人間が最初に死んでいくのだろう。贅沢ばかりしてきた人間は対応できないだろうから。
そういう時に動物たちがいうのかもしれない。
人間を守ろう。
家の帰りには小学校もある。ちょうど昼休みで子供たちが遊んでいた。ゴールポストの隅っこで座っていた昼休みを思い出した。
カネコアヤノのアルバムはちょうど家につくくらいに一周した。すごくよかった。
何度も聞くことになるだろうと思った。
今日も風が強かった。朝にセットした髪の毛が崩れてしまうことを恐れて前髪をかばって歩いていたが、あまりにも風が強かったのであきらめた。家に帰って鏡を見るとウルトラマンみたいな髪型をした自分がいた。
コーヒーを飲みながら、きのこの山を食べる。就活はしない。